~シニアパワーから見る世代間格差~
このブログでは、東電、JR、そして中央省庁など、巨大な既得権益を持ち、競争のない環境に置かれている組織について記述することに力点を置いています。が、組織ではないものの、日本で巨大な既得権益を持つ集団の一つである、シニア世代 について述べてみます。
1月21日の日経夕刊にシニア世代60歳以上の年間消費支出が平成23年度に100兆円を突破し、消費全体の44%を占めているという記事が載った。44%がどこから算出されたのかは不明であるが、すると消費支出全体は約230兆円という計算になる。60歳以上人口は3960万人(平成22年)だから、1人当たり、252万円/年となる。(この数字は、ちょっと大きすぎる感がある) 日本のGDP(530兆円程度)における家計最終消費支出が293兆円(平成23年)であるから、そんなにはずれた数字ではないのかも知れない。
さらに、消費支出を耐久財、半耐久財、非耐久財、サービスと4分類すると、サービス支出が45~55%程度を占め、その比率は増加傾向にある。ここで、サービスには、家賃、外食、医療、教育、娯楽などが含まれる。
若い世代はシニア世代よりもサービス支出の比率が10%程度高い傾向にはあるが、これは主に外食と家賃支払いが多いことによるもので、若い世代が娯楽に耽っているわけではない。教養娯楽への支出の絶対額はシニア世代の方が大きいのである。
新聞の広告欄を埋めるのは、シニア世代をターゲットにした
国内旅行、海外旅行、健康食品、アンチエイジング系化粧品、尿漏れも平気な老人向け衣料、利殖、墓地、仏像、はては戦艦大和のプラモデルを作ろうという広告まで。シニア世代向けのものばかり。ある日の新聞を調べて見たら、全36の紙面のうち、20面に上記のいずれかの広告が掲載されていた。もはや、新聞はシニア向け読み物になりきっている。
一方、Yahooのトップページなどのインターネット広告は、携帯、スマホ、自動車(新車ではなく安く買える中古車です!)、時々マンション、ゲーム、映画、コンタクトレンズ、ダイエット、彼女と貸切風呂できる温泉旅行などが占める。(スマホで彼女にメールで告白して、中古車をころがして、2人だけの温泉旅行にゆく、のが若者の生態?!)
フィットネスクラブも20から30代の利用は減り、50歳以上の会員が増加しているという。
昨年、私は久しぶりに平日に休暇をとって、伊豆の温泉に行ったのだが、観光地の売店、レストランを埋めているのは、シニアのおばさんばかりで、目を丸くせざるを得なかった。(なぜか、おばさんはおじさんの2倍以上の数) 客の80%は現役を引退した年金世代である。
そして、この人々が旅館やホテルに泊まってお金を落とすんだなあ、と感嘆した。もはや、国内の旅行産業は、シニア世代なしでは成り立たない。平日の空室を埋めるのはシニア世代が大半を占めるからだ。
都内で、メルセデスやBMWのようなドイツ製高級乗用車にすれ違うたびに、運転者を観察してみると、運転しているのは、ITベンチャーで成功した社長、、、ではない。医者、弁護士、個人事業主風の人が多いのは変わりはないが、4人に1人はシニア世代と観察できる。そんなに、会社で出世して成功したシニアばかりが東京に多いのだろうか? 否、である。普通に会社員を勤め、部長や課長クラスで退職したとしても、ちょっと手を伸ばせばそのような高級車が買える。若い頃欲しかっけど買えなかったんだ~と、言いながらベンツやBMWを買うことができるのである。
(まだまだ日本ではシニアがクラシックカーを手入れをしながらドライブする趣味は定着していない。)
いくつかの統計的事実を列挙しておくと、
・日本の金融資産の60%を60歳以上が保有し、80%を50歳以上が保有する(平成19年度)
・二人以上の世帯の1世帯当たり貯蓄現在高は1657万(平成22年) この内、60歳以上の平均は2500万円を超える(平成12年)
・二人以上の世帯について,世帯主が60歳以上の1世帯当たり家計資産額(純資産額)は6562万円(平成11年)
内訳は、宅地資産3802万円
金融資産が1966万円
住宅資産が615万円
耐久消費財資産179万円
つまり、金融資産だけでなく、不動産資産でさらに若年世代との差は開く。
・二人以上の世帯について、世帯主が65歳以上(かつ無職)の1世帯あたり実収入は245千円/月(平成12年)。内、年金は217千円。企業年金加算で総計35万円以上の年金収入になるケースもある。これは若い世代の初任給よりも多い。
これだけではない。シニアにはお金を使わずに済むさまざまな社会的な優遇がある。医療費、公営住宅、交通費(鉄道・バス)、娯楽(各種の入場料)などなど。医療費と公営住宅が金額的に大きいが、映画なんて50代夫婦で行けば半額だ! 東京都の老人医療費助成制度は平成19年6月末で廃止されたが、それまでは医療費はただみたいなものだった。これらの割引は20代には適用されない。
豊かな老後が過ごせるというのは、とても良いことではあるが、世代間の格差がこれほどまでに存在すると、その豊かさは世代間搾取によるものと認定せざるを得ない。正確には若い世代の「未来の犠牲」に基づく豊かさである。なぜなら、シニア世代は、子供をそう沢山は作らず、つまり未来の世代を育てることにコストをかけずに貯蓄をし、しっかりお金を蓄えているのに、さらに自分達の年金を少数の子供達に払って貰っている。しかも、この過程で作られた膨大な国の借金を返すために、税金は若い世代にもしっかり払って貰おうとしているのだから。
この状態を変えるには、生前贈与などの枠を広げるといった小手先の立法施策も必要だが、根本的には、若い世代の意見が政策に反映されるように政治の仕組みを変えなければならない。既に、世代間の一票の格差については、多くの論者が問題を提起している。この格差は、
1.年代別の人口比
2.年代別の投票率
3.地方選挙区と都市部の高齢化率の違い
4.年代別の投票数における死票の比率
1×2×3×4の掛け算で生み出される。
試みに60歳代と20歳代を比べると、
1については、 1838万人:1392万人 = 1.32 : 1
2については、 85% : 50% = 1.7
3は、1票の重みが都市部に比べて高い地方選挙区において、より高齢化が進んでいる※ことによって生まれる格差である。
65歳以上の比率が高い県と低い県では、27%と18%であり、仮に1票の格差が2:1とすると、
(中央と地方選挙区における一票の格差は、最大で衆院で2.4倍、参院で5倍となっている)
1×2×3で、 60代 : 20代 = 2.56 : 1 となる。
ここまでで、60代は20代の2.56倍の政治的パワーを持つと試算される。
4では、若年層の投票行動において、死票となる比率は、シニア層の何倍であろうか? 若者に国費留学を、とか若年層の雇用を義務化しろ、ベンチャー企業の優遇税制をといった政策を唱える候補者がいたとしても、まず当選しない。選挙の争点は、年金、福祉、医療といった政策ばかりになる。若者世代の死票の比率は、小選挙区においては数倍に達するかも知れない。
さすれば、最終的に意見が当選者という形で政治に反映されるのは2.56:1どころではなく、5:1から10:1の格差に達している可能性がある。
人口ピラミッドならぬ、有効投票ピラミッドは、台のないワイングラスの形に近い。つまり、選挙ではシニア層の意見が勝つような仕組みができあがっている。これは法の下の平等とはとても言えない。
(ちなみに、70歳以上は、平均寿命の長い女性のパワーが高くなるので男は分が悪い...)
民主でも自民でもない第3局が生み出されるのは必然のことであって、これを一過性のものではないパワーにするには、選挙制度の改革は不可欠である。
1.年代別人口比による補正をかける
2.投票率改善のための投票制度を改革する(流行の言葉で言えばスマホで投票!など)
3.地方と都市部の1票の格差を是正する
4.中選挙区や比例代表を増やす
を総合的に実施する必要がある。
1は、例えば20代の有権者の1票を1.32票分と補正計算をすることを意味する。これを実施すれば、個人毎に見れば1票の格差を作ることになるので、法の下の平等に反するという学者もいるだろう。しかし世代という塊単位に見れば、法の下の政治的な発言権の平等を生み出すこととなる。人口がピラミッド型であったならば、実質的には勤労世代が一番の発言力を持つが、それが釣鐘型になり、逆ピラミッド型になれば、未来の長さが短い(人生の残りが少ない)リタイア世代の意見の比重が過度に高くなることになる。
高齢者の意見ばかりが反映されると、消費税率を決めるにも、高齢者が使途とする医療費や食費は免除といった施策ばかりが優先され、若年世代が使途とする家賃や外食費には消費税がかかる、といったいびつな政策が実施されることになりかねない。
シニアには持ち家がある。若者は、家賃を払って住まなければならない。しかし、賃貸住宅を建てる建材には消費税がかかるから、大家さんはそれを家賃に転嫁せざるを得ない。
もちろん、課題はある。
投票箱に入るのは、無記名の紙切れである。箱に入ってしまえば、すべて1枚1票と数えるしかない。1を実施するには、世代別に投票用紙を分け、かつ用紙の違いを自動集計する機械が必要になるだろう。これは選管の手間を大幅に増大させることになる。また、ネット投票を実施すれば、投票行動というプライバシーの保護という問題も発生する。有権者の本人認証と、プライバシーの保護を両立させなければならない。
しかし、そのような問題があってなお、選挙制度の改革は、もはや待っていられない喫緊の課題であると思う。金は掛かっても実施すべきである。
4については、衆議院の定数(小選挙区が300、比例代表が180)を比例議席を中心に削減しようとしようとしているのは、高齢化社会のひずみ是正要請に逆行する施策である。消費増税の見返りに衆院の定数削減をする、などという理屈は合理性を全く欠いている。所詮、国会議員を多少減らしたところで予算削減は微々たるものだからだ。国会議員自ら身を切る態度を示すべき、といった精神論だけの施策は止めなければならない。
高齢化社会が生んだシニア世代の既得権益、これを是正しなければ、日本の未来はないだろう。
是正を進めるには、選挙制度から改革しなければならない。
シニア世代自身も、若者も、男も、女も、、、日本人ならば、是非、この議論を深め、意見の広がりを大きくするように行動しましょう。
※ 統計局
http://www.stat.go.jp/data/chiri/map/c_koku/nenrei/index.htm
http://www.stat.go.jp/data/topics/171-3.htm
などを見ると分かる。


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